人生って、本当に何が起こるかわからないものですね。5年前の今頃、まさか自分が大須で3つのお店を経営しているなんて、夢にも思いませんでした。

2020年夏、僕は、父から継ぎ10年間は社員として、勤めたその後経営者として10年勤め上げた老舗製造業の会社を大きくするために何を出来るか?を模索していました。経営者として安定した生活を送っていましたが、どこか心の奥で「これで良いのか」という疑問が日に日に大きくなっていたんです。

転機になったのは、たまたま友人と訪れた大須でした。コンセプトカフェという文化を初めて知り、キャストさんたちが一生懸命お客さんを笑顔にしようとする姿に強く感動したんです。製造業で培った「お客様に価値を届ける」という想いと、どこか通じるものを感じました。

「ここで何かできないだろうか」

そんな漠然とした想いから、SUGAR&SPICEの開業準備が始まりました。でも正直、最初は失敗の連続でした。製造業の常識が全く通用しない世界で、毎日が手探り状態。特にキャストさんたちの気持ちを理解するのに時間がかかりました。

一番印象に残っているのは、開業から3ヶ月頃のことです。あるキャストさんが突然泣き出してしまったんです。理由を聞くと、お客さんとの距離感に悩んでいたんですね。その時、僕は経営者として何も分かっていなかったことを痛感しました。

その日から、キャストさん一人ひとりと向き合う時間を大切にするようになりました。製造業時代に学んだ「現場の声に耳を傾ける」ことの大切さを、改めて実感した瞬間でした。

今では3店舗を運営し、八咫烏舎という支援会社まで立ち上げましたが、根本にあるのは変わらず「みんなが安心して働ける環境を作りたい」という想いです。製造業で培った安全第一の考え方が、今でも僕の経営の軸になっています。

振り返ると、あの時の決断は間違っていなかったと思います。でも一番感謝しているのは、僕の無謀な挑戦を支えてくれたキャストさんたち、そして温かく迎えてくれた大須の皆さんです。

人生の後半戦、まだまだやりたいことがたくさんあります。でも焦らず、一歩ずつ前に進んでいこうと思います。

最近、ふとした瞬間に考えることがある。僕らが運営しているこの3店舗は、本当にお客さんにとっての「居場所」になれているのだろうか?

昨日の夜、SUGAR&SPICEの営業後にキャストさんたちと話していた時のことだ。「お客さんの中には、ここが唯一安心できる場所だって言ってくれる方もいるんです」という言葉を聞いて、嬉しい反面、ちょっと複雑な気持ちになった。

確かに、コンセプトカフェという業界は「非日常」を提供する場所として発展してきた。可愛い衣装を着たキャストさんがいて、楽しい会話があって、日常の疲れを癒せる空間。でも、それが本当の意味での「居場所」と言えるのか。

僕自身、元々は製造業で働いていたから、職場でのプレッシャーや人間関係の難しさは身に染みて分かる。だからこそ、お客さんがリラックスできる場所を作りたいと思って始めた。でも運営していく中で気づいたのは、居場所って「作ってもらう」ものじゃなくて、お客さん自身が「作っていく」ものなんじゃないかということ。

Mimiの常連さんで、最初は人見知りが激しくて一人でぽつんと座っていた方がいる。でも今では他のお客さんとも自然に会話して、時にはキャストさんの相談に乗ったりもしている。その変化を見ていると、僕らはきっかけを提供しているだけで、本当の居場所は彼が自分で築き上げたんだと思う。

ユメヲカケル!のキャストさんが言っていた。「お客さんが帰る時の表情が、来た時よりも明るくなっているかどうかを見るようにしています」って。これって、すごく大切な視点だと思う。一時的に楽しませるだけじゃなくて、お客さんが外の世界に戻った時により良い気持ちでいられるかどうか。

同業者の皆さんはどう思われるだろう。僕らが提供すべきは「居場所そのもの」なのか、それとも「居場所を見つけるためのヒント」なのか。お客さんにとって本当に価値のある時間って何なのか。

正直、まだ答えは見つからない。でも一つだけ確信していることがある。キャストさんたちが心から笑顔でいられる環境を作ることが、結果的にお客さんの居場所作りにもつながるということ。無理をして作った笑顔じゃ、本当の安らぎは生まれない。

今日も3店舗それぞれで、たくさんの出会いと会話が生まれる。その一つひとつが、誰かにとっての小さな居場所のかけらになってくれることを願いながら、僕も裏方として頑張っていこうと思う。

4月第一週の数字が出揃いました。3店舗合計で前年同月比良い結果で、正直ホッとしています。

昨日、各店舗のマネージャーから週次レポートを受け取って、久しぶりに夜中まで数字と向き合っていました。売上だけじゃなくて、客単価、リピート率、新規顧客の割合…。スプレッドシートを眺めながら、5年前の製造業時代を思い出していたんです。あの頃も毎月の生産効率や品質指標とにらめっこしていましたが、今扱っているのは数字の向こうに確実に「人」がいるデータなんだなと。

SUGAR&SPICEが特に好調で、いい数字が出ています。開業から5年が経って、ようやく地域に根づいた実感があります。でも数字が良いからといって安心はできません。先月、常連のお客さんから「最近忙しそうで、前みたいにゆっくり話せないね」と言われたことがあって。成長の影で大切なものを見失ってはいけないなと反省しました。

Mimiとユメヲカケル!も順調で、特にユメヲカケル!は新人キャストさんが加入してから客層が広がって、20代前半の新規のお客さんが増えています。ただ、新人さんのフォローに手間取って、既存キャストさんにしわ寄せがいってしまった時期もありました。数字だけ見ていると見えない部分ですが、現場のバランスを保つのは本当に難しい。

累計売上も目標の大台が見えてきました。2021年に1店舗目を始めた時は、こんな数字になるなんて想像もしていませんでした。でも最近よく思うのは、この数字の重みです。これだけの売上ということは、それだけ多くの方に足を運んでいただいているということ。そして何より、キャストさんたちが毎日頑張ってくれているからこその結果です。

数字に一喜一憂するのは経営者として当然ですが、大切なのはその数字が何を物語っているかを読み解くこと。売上が上がっているのは単純に嬉しいけれど、それがキャストさんたちの負担になっていないか、お客さんに十分なサービスを提供できているか、常に自問しています。

来週からはゴールデンウィークに向けた準備が本格化します。例年この時期は売上が大きく伸びるのですが、今年は特に気を引き締めて臨みたいと思います。数字も大切ですが、お客さんにもキャストさんにも喜んでもらえる店づくりを最優先に。そうすれば結果は自然とついてくると信じています。

経営者として13年目に入って、最近すごく大きな気づきがありました。それは「完璧を求めすぎると、かえってチーム全体のパフォーマンスが下がる」ということです。

先月のことなんですが、新しいイベント企画の準備で僕がかなり細かく指示を出していたんです。「ここはこうして、あそこはああして」って。元々製造業出身なので、品質管理や工程管理には自信があるし、ついつい完璧を求めてしまう癖があるんですよね。

でも、打ち合わせの途中でキャストさんの一人が「佐野さん、私たちにもっと任せてもらえませんか?」って言ってくれたんです。その時のハッとした感覚は今でも覚えています。

確かに振り返ってみると、僕が細かく管理しようとすればするほど、みんなの表情が硬くなっていたんです。自分で考えて動く機会を奪ってしまっていたんですね。

翌週から意識的に「任せる範囲」を広げてみました。もちろん、お客さんの安全や基本的なサービス品質に関わる部分は譲れませんが、細かな演出や接客のアプローチは各店舗のキャストさんたちに委ねることにしたんです。

そうしたら驚くような変化が起きました。SUGAR&SPICEでは、キャストさんたちが自主的に季節限定のオリジナルドリンクを考案してくれて、それがお客さんに大好評。Mimiでは、スタッフ同士で「こうしたらもっと良くなるんじゃない?」という会話が自然に生まれるようになりました。

ユメヲカケル!に至っては、僕が思いもしなかったサービス改善案をキャストさんが提案してくれて、実際に導入したら売上が15%もアップしたんです。

今思えば、僕は「管理すること」と「マネジメントすること」を混同していたのかもしれません。管理は仕組みを守らせること、でもマネジメントはみんなが力を発揮できる環境を作ることなんだなって。

特にこの業界は、人と人との関わりが全てです。キャストさん一人ひとりの個性や感性が、お客さんとの素敵な時間を作り出している。その部分まで僕が型にはめようとしていたら、本当にもったいないことをするところでした。

最近は毎朝の店舗巡回でも、「今日はどんなアイデアが聞けるかな」ってワクワクしています。昨日も常連のお客さんから「最近スタッフさんたちがイキイキしてるね」って言ってもらえて、本当に嬉しかったです。

完璧を目指すのは悪いことじゃないけれど、それをみんなで作り上げていくプロセスこそが大事なんですね。今はそれがよく分かります。

深夜の店舗巡回をしていると、普段見えない部分が見えてくる。昨夜も3店舗を回りながら、改めて現場の大切さを実感した話をしたい。

SUGAR&SPICEでは、いつも元気なAちゃんが少し疲れた表情を見せていた。お客様の前では笑顔を絶やさないけれど、バックヤードで見せる表情は正直だ。声をかけてみると「最近、新人さんのフォローで忙しくて…」とポツリ。そういえば、彼女は自然とリーダー的な役割を担ってくれている。

「無理しなくていいよ」と伝えたけれど、きっと責任感の強い彼女のことだから、また頑張りすぎてしまうだろう。こういう時、経営者として何ができるかいつも悩む。

Mimiでは、逆に新人のBちゃんが以前より堂々としていることに気づいた。1ヶ月前は緊張でガチガチだったのに、今では常連のお客様と自然に会話している。「慣れました?」と聞くと「先輩たちが優しくて、安心できるんです」と笑顔で答えてくれた。

この変化を見ていて思ったのは、店舗の雰囲気って本当にスタッフ同士の関係性で決まるということ。お客様はその空気感を敏感に感じ取っている。だからこそ、裏方での人間関係やフォロー体制がいかに大切かを痛感する。

ユメヲカケル!では、閉店作業中のスタッフたちの会話が印象的だった。「今度のイベント、緊張するね」「大丈夫、みんなでフォローし合おう」そんな自然なやり取りを聞いていると、このチームワークこそが店舗の財産だと感じる。

製造業時代は数字やプロセス管理が中心だったけれど、今は「人」が全ての中心にある。一人ひとりのコンディション、チーム内の関係性、お客様との距離感…全てが複雑に絡み合いながら店舗が成り立っている。

巡回を終えて帰宅する頃には、改めて現場で働くスタッフたちへの感謝でいっぱいになっていた。彼女たちが安心して働ける環境を作ること、それぞれの成長をサポートすること。当たり前のことかもしれないけれど、毎日の積み重ねでしか実現できない。

明日はAちゃんのシフト調整について相談してみよう。小さな変化を見逃さず、一つずつ対応していく。それが今の僕にできることだから。