「好かれる店」より「信頼される店」を作りたいと思い続けてきた話
正直に言う。コンカフェを始めた頃、ぼくは「お客さんに喜んでもらえる店を作れば全部うまくいく」と思っていた。甘かった。
2021年にSUGAR&SPICEを開業して、もう5年近くが経つ。今は大須でMimiとユメヲカケル!も合わせて3店舗を動かしている。アイドル事業やイベント企画も走っている。傍から見れば「順調に拡大してる経営者」に映るかもしれない。でも内側にいるぼく自身は、今もずっと問い続けている。「この店は、信頼されているか」と。
好かれることと信頼されることは、似てるようで全然違う。
好かれるのは、楽しい瞬間があればできる。でも信頼は、地味な積み重ねの話だ。何かトラブルがあったとき、スタッフに理不尽なことが起きたとき、そういう場面でどう動くかで決まる。
一度、キャストのひとりが深夜に体調を崩したことがあった。「帰っていいよ」と言えた仕組みがあったからよかった。でも以前のぼくだったら「もう少し頑張ってほしい」と無意識に思っていたかもしれない。製造業を長くやっていた人間の悪い癖だ。現場を回すことを優先してしまう。
キャストが辞めたくないと思える店を作る。これがぼくの根っこにある哲学になったのは、そういう小さな失敗の積み重ねからだった。
稼げる店と、キャストが居続けたい店は、必ずしも同じじゃない。でもぼくは後者を選ぶと決めている。
もうひとつ、ぼくが大切にしていること。「経営者がいなくても回る仕組みを作ること」。
これ、言葉にすると簡単に聞こえるけど、実際にやろうとするとものすごく怖い。自分が必要とされなくなるような感覚があるから。でも逆に言えば、経営者がいないと回らない店は、キャストもお客さんも不安定にさせる。ぼくが体調を崩しても、旅に出ても、店が普通に開いていて、キャストが笑っていられる。そういう状態を目指している。
大須コンセプトショップ協会の理事として、他のお店の方々と話すことも増えた。みんな、それぞれの哲学を持って店をやっている。業界全体がもっと良くなってほしいと思うし、そのためにできることはやっていきたい。
派手なことが好きじゃないわけじゃない。音MABUSHIも推し撮りフェスも、めちゃくちゃ楽しんでやっている。でもイベントの華やかさの裏側に、スタッフの安全と信頼の積み重ねがなければ、続かない。
きれいごとだけで終わらせたくないから、正直に書く。ぼくはまだ完成した経営者じゃない。今も葛藤しているし、判断を間違えることもある。
でも「信頼される店を作る」という軸だけは、ぶらさないでいようと思っている。それが今のぼくの答えだ。

