製造業の社長が、なぜコンカフェを始めたのか。その話をしようと思う。
よく聞かれる。「なんで製造業やってたのにコンカフェ?」って。
正直に言う。最初は自分でも、よくわからなかった。
製造業に携わって20年近く。工場の現場から経営まで、それなりにやってきた。ものを作って、納品して、取引先に喜んでもらう。そのサイクルが自分の世界のすべてだった。
転機は2020年。コロナで世界が止まった。
工場は動いている。でも、何かが変わった。自分の中で、ずっと見て見ぬふりをしていた問いが浮かんできた。「自分は本当に、何かを作りたいんだろうか」って。
その頃、ふと立ち寄った大須のお店で、キャストの子が笑顔でお客さんと話しているのを見た。
特別なことじゃない。ただ、誰かが誰かと、ちゃんと向き合っている時間。それが妙に刺さった。
「こういう場所を作れたら、面白いかもしれない」
軽い気持ちだった。本当に。
でも、動いた。2021年、SUGAR&SPICEをオープンした。
最初は失敗の連続だった。製造業の感覚でやろうとして、全部うまくいかなかった。ものを作る仕事と、人と人をつなぐ仕事は、まったく違う。当たり前のことだけど、身をもって知った。
キャストの子が泣いて相談に来た夜もあった。仕組みが整っていなくて、自分のせいで傷つけてしまったこともある。経営者として、本当に情けなかった。
そのたびに思った。「稼げる店より、辞めたくない店を作ろう」と。
製造業で学んだことがひとつある。現場が安定していないと、いいものは作れない。それは、コンカフェも同じだった。
キャストが安心して働ける環境を作ること。それが先。お客さんに喜んでもらうのは、その後についてくる。順番を間違えると、全部崩れる。
今は3店舗になった。MimiもユメヲカケルもSUGAR&SPICEも、それぞれ違う顔を持っている。アイドル事業も始めた。イベントも増えた。
でも、根っこはずっと同じ。2021年に大須で感じた、あの「誰かが誰かと向き合う時間」を守ること。
経営者としての自分の仕事は、その時間が生まれる「仕組みを作ること」だと思っている。自分がいなくても、ちゃんと回る構造。そこを目指してる。
まだ道半ばだ。正直、全部うまくいってるわけじゃない。悩んでいることも、解決できていないことも、たくさんある。
でも、あの日大須で感じた「刺さり方」は間違ってなかったと、今は思える。
製造業の社長がコンカフェを始めた理由。それが、この話の答えだ。

