2026.07.25

製造業の社長が、なぜコンカフェを始めたのか。その答えを今日やっと話せる気がした

正直に言う。最初は「逃げ」だった。

2020年、コロナ禍のど真ん中。製造業の経営は続けていたけれど、何かが空洞になっていく感覚があった。ものを作って、納品して、数字を見て、また次の月へ。それ自体は誇りを持ってやってきた仕事だ。でも、「誰かの顔が見えない」という感覚が、じわじわと自分を蝕んでいた。

工場の機械は正直だ。設計通りに動く。管理すれば結果が出る。でも、その確実さの中で、俺はいつの間にか「人と向き合うこと」が怖くなっていた気がする。

大須を歩いたのは、本当にたまたまだった。

ある日、ふらっと入ったコンセプトカフェで、店の子が楽しそうに話しかけてきた。お客さんが笑っていた。店全体に、なんとも言えない「熱」があった。製造業では感じられなかった、あの瞬間の「生きた空気」みたいなもの。

その日の帰り道、気づいたら物件を調べていた。我ながら単純だと思う。

2021年、SUGAR&SPICEをオープンした。もちろん、うまくいかないことだらけだった。製造業の「仕組み化」の発想で店を作ろうとしたら、全然違う生き物だったと知った。マニュアルでカバーできないことが毎日起きる。キャストの子が泣いていた日もある。俺が判断を誤って、信頼を損ねそうになったことも一度や二度じゃない。

一番きつかったのは、「俺が正しいと思ってやったことが、キャストを追い詰めていた」と気づいた瞬間だ。効率を求めるあまり、現場の子たちの「声になる前の声」を聞けていなかった。製造業の癖が、最悪の形で出た。

そこから経営の軸を変えた。「稼げる店を作る」じゃなくて、「辞めたくない店を作る」に。

今、Mimiとユメヲカケル!も含めて3店舗を運営している。コンカフェの支援事業もやっているし、アイドルの全国ツアーも動かしている。傍から見れば「うまくいっている」に見えるかもしれない。でも俺の中には、まだあの空洞の記憶がある。

その記憶があるから、たぶん続けられている。

製造業で培ったのは「仕組みを作る力」だ。人がいなくても回る構造。その考え方は今も使っている。でも今の俺が大切にしているのは、仕組みの中に「人が輝ける余白」を残すことだ。機械と違って、人はその余白の中で一番いい顔をする。

キャストの子たちを見ていると、そう思う。毎日。

42歳になった今も、まだ答えを探している。完成した経営者じゃない。ただ、あの大須の路地で感じた「生きた空気」を、自分の店でも作り続けたいという気持ちだけは、ぶれていない。

それだけで、今日も十分だと思っている。