正直に言う。コンカフェの現場って、毎日なにかが起きる。

今日は大須の店舗を3軒まわった。火曜日は比較的落ち着いている曜日なんだけど、それでもいろんな出来事があった。

SUGAR&SPICEに着いたのが昼すぎ。スタッフから「昨日の夜、常連さんと初めて来たお客さんがちょっと…」って話を聞かされた。詳細は省くけど、席の雰囲気が険悪になりかけたらしい。キャストの子がうまく間に入って、なんとか丸く収めてくれた。

それを聞いて、最初に思ったのは「ありがとう」だった。謝られる前に、ありがとうって言った。

ああいう場面って、誰でも動けるわけじゃない。瞬時に判断して、笑顔を崩さずに場を整える。それって本当に難しいことで、マニュアルで教えられることじゃない。

Mimiに移動したら、今度は別の子から「ちょっと相談があって」って声をかけられた。

仕事の悩みじゃなくて、プライベートな話だった。自分の将来について、ぐるぐる考えていることがあるって。

経営者として何かアドバイスするより、ただ聞いた。30分くらい。

帰り際に「話せてよかったです」って言ってくれた。それだけで十分だった。

ユメヲカケル!では、ちょうどキャストの子たちのミーティング中に顔を出した。来月のイベントの役割分担を、自分たちで決めていた。自分が何も言わなくても、話し合いが進んでいる。

こういう場面を見ると、「ああ、仕組みが動いてる」って感じる。経営者が全部仕切らなくていい状態が、いちばん健全だと思っている。自分がいなくても店が回ること。それがずっとめざしてきた形だから。

ただ、正直に言うと今日は少し疲れた。

3店舗まわりながら、頭の中にはアイドル事業「SUGAR SPIRAL LIVE」の来年のツアー構成も浮かんでいて、大須コンセプトショップ協会の件も積み残していて。情報が多すぎて、夕方には少し頭が重かった。

名古屋のグルメ仲間から「新しい店できたで」って連絡が来ていたけど、今日は行けなかった。食べ歩きは自分の充電なので、近々必ず行く。

信頼される店を作るって、きれいな言葉に聞こえるかもしれない。でも実際は、地味な積み重ねばかりだ。

トラブルを丁寧に処理して、スタッフの話をちゃんと聞いて、自分たちで動ける環境を少しずつ整えていく。派手さはない。でも、それが全部だと思っている。

今日も現場に行ってよかった。それだけ確かだ。

正直に言う。コンカフェを始めたとき、流行に乗っているだけじゃないかと思われていた自覚がある。

製造業の経営者が、なぜ名古屋・大須でコンカフェを? そう聞かれることは今でも多い。

答えは単純だ。「ここにいたい」と思える場所を作りたかった。それだけ。

2021年にSUGAR&SPICEを開業して、今年で5年目に入った。Mimiも立ち上げて、ユメヲカケル!もできた。3店舗になって、スタッフもキャストも増えた。でも、根っこにある考えは変わっていない。

「稼げるコンカフェより、キャストが辞めたくないコンカフェを作る」

これが自分の軸だ。

—

なぜそこにこだわるのか。

開業して間もないころ、あるキャストの子が突然来なくなったことがある。連絡が取れなくなって、数日後に「体調を崩していた」とだけ聞いた。

そのとき初めて気づいた。自分は「店を作った」つもりでいたけど、「働く人が安心できる場所を作ること」を後回しにしていた、と。

シフト管理も、相談できる窓口も、何かあったときのフォロー体制も。何もなかった。恥ずかしい話だけど、それが現実だった。

そこから少しずつ変えてきた。仕組みを作ることに時間を使うようにした。自分が現場に張り付かなくても、キャストが安心して立てる構造を。

—

「好かれる店」というのは、雰囲気がよくて、SNSで映えて、お客さんの数字が伸びていく店のことだと思っていた時期がある。

でも今は違う考え方をしている。

「信頼される店」というのは、何かあったときに頼れる店のことだ。キャストが困ったときに相談できる。お客さんが何年経っても「あの店は誠実だった」と思える。そういう積み重ねでしかできないものだと思っている。

派手さはない。数字が急に跳ね上がるわけでもない。地味で、遅くて、回り道に見える。

でも、それでいいと腹を括った。

—

八咫烏舎でコンカフェ支援の事業もやっている。大須コンセプトショップ協会の理事も務めている。SUGAR SPIRAL LIVEというアイドル事業で全国をまわることもある。

関わる人数が増えるほど、責任の重さは増す。

正直、しんどいと思う瞬間もある。判断を間違えたと気づいて、眠れない夜もある。

それでも続けているのは、キャストたちの顔が浮かぶからだ。

ステージに立つ彼女たちの緊張した顔、お客さんに「また来ます」と言われたときの表情、閉店後にこっそり「今日楽しかったです」と送ってくるメッセージ。

そういうものが積み重なって、自分はここにいる。

—

哲学、なんて大げさな言葉を使うつもりはない。

ただ、「人が辞めたくないと思える場所を作り続ける」という一点だけは、ブレずにいたい。

今はまだ途中だ。理想には程遠い。でも、5年前の自分よりは少しだけ、ちゃんとした場所を作れていると思っている。

それで十分だと、今は思っている。

今日は10月11日、日曜日。
名古屋は少し涼しくなってきた。

朝から大須をぶらぶらして、気に入ってる台湾料理屋でルーローファンを食べた。こういう何でもない時間が、自分には一番必要だなと思う。

せっかくなので、今日は感謝と近況をまとめて書いておこうと思う。

—

SUGAR&SPICEを開業したのが2021年。あの頃は製造業の経営と並行しながら、正直「うまくいくかどうか」なんて全然わからなかった。それがMimi、ユメヲカケル!と3店舗になって、イベントもやって、アイドルの全国ツアーまで動かすようになった。

自分でも「何やってんだろ」って思うことがある(笑)。

でも、これだけ続けてこられたのは本当にシンプルな理由で、お客さんがいてくれたから。そしてキャストたちが辞めなかったから。

この2つだけ。

—

最近、あらためてキャストたちのことを考えることが多い。

先日、スタッフとちょっとした打ち合わせをしていて、「ここ、好きで続けてます」って言ってくれた子がいた。

何気ない一言なんだけど、正直かなり刺さった。

自分が目指してきたのは「稼げる店」じゃなくて「辞めたくない店」だから。その言葉が出てきたということは、方向性は間違ってなかったんだなと思えた。

もちろん全員がそう思ってるわけじゃないだろうし、見えていない不満もあると思う。それは自覚してる。だから満足して終わる気はない。ただ、あの一言は素直に嬉しかった。

—

お客さんへの感謝も、ちゃんと書きたい。

大須という街は不思議な場所で、全国からいろんな人が来る。常連さんもいれば、初めて来てくれた方もいる。遠征してくれた方もいる。

お客さんの顔は全部は覚えられていないけど、何度も来てくれている方の存在が、店全体の空気をつくっていると思っている。スタッフもそれを感じているはずで、「通ってくれる人がいる」というのはキャストのモチベーションにも直接つながっている。

そういう意味で、お客さんとキャストは切り離せない関係にある。

—

経営者として正直に言うと、まだ「自分がいなくても回る仕組み」は完成していない。

イベントもツアーも、自分が動かないと進まない部分がまだ多い。それは課題として持ち続けている。

八咫烏舎も、大須コンセプトショップ協会の活動も、全部中途半端にならないようにしたいけど、体は一つしかない。うまくバランスが取れていない日もある。

それでも、関わってくれている全員への感謝は本物だ。

—

42歳の秋。

特別なことは何もない日曜日だったけど、こうして文章にして残しておいてよかった。

ありがとう、をちゃんと言える人間でいたい。それだけは変わらずにいようと思っている。

正直に言う。最初は「遊びで始めた」と思われることが怖かった。

2021年、僕は製造業の会社を経営しながら、名古屋・大須にSUGAR&SPICEを開いた。42歳になった今でも、あの決断を振り返ると少し胸がざわつく。

製造業は、父の代から続く仕事だ。鉄とか樹脂とか、目に見えるものを作る世界。品質管理、納期、コスト。そういう言葉で毎日が回っていた。決して嫌いじゃなかった。でも、どこかずっと「自分が作りたいもの」への渇望があった。

転機は、コロナ禍だった。

製造業も打撃を受けた。先の見えない時期に、ふと立ち寄った大須の街で、小さなカフェの前に行列ができているのを見た。雨の日だったと思う。それでも並んでいる人たちの顔が、なんか楽しそうで。「ここに来ることが、今日の活力なんだろうな」と感じた。

そのときに思った。製造業で作ってきたのは「モノ」だった。でも本当は「体験」を作りたかったんじゃないか、と。

最初の店は、本当に手探りだった。製造業の経験なんてほぼ役に立たない。シフトの組み方も、スタッフとの向き合い方も、何もかもが新鮮で、何もかもが失敗の連続だった。

特に辛かったのは、オープンから半年で複数のキャストが辞めていったこと。理由を聞いても、はっきりとは教えてもらえない。製造業では機械が「辞める」ことはない。人が離れていく感覚は、想像以上にきつかった。

悔しくて、たくさん考えた。

出した答えは「稼げる店じゃなくて、辞めたくない店を作る」だった。報酬とか集客の仕組みより先に、キャストが安心して働けるかどうかを最優先にしよう、と。舞台裏を整える仕事の方が、派手な施策より大事だと気づいた。

製造業で学んだことが、ここでようやく活きてきた。「仕組みを作ること」だ。現場が自分なしでも回る構造を作ること。それは工場でも、カフェでも、変わらない。

今はSUGAR&SPICEを含めて3店舗。アイドル事業もイベントも動いている。外から見ると「うまくやってるな」と思われるかもしれない。でも今でも迷うし、判断を間違えることもある。

大須という街が好きだ。ごちゃごちゃしていて、ジャンルが混在していて、でもそれぞれがちゃんと輝いている。そういう街で、自分の店がちゃんと「信頼される場所」になれているかどうかを、今も毎日問い続けている。

製造業の社長がコンカフェを始めた理由。きれいに一言では言えないけど、結局は「人の顔が明るくなる瞬間を作りたかった」ということだと思う。キャストの顔も、お客さんの顔も、両方ね。

それだけは、ブレずにやってきた。これからも、たぶんそうだと思う。

少し前、あるキャストの子に言われた言葉が頭から離れない。

「ここにいると、自分が必要とされてる気がするんです」

嬉しい言葉だった。でも同時に、少し怖くなった。

その子にとって「必要とされる場所」がここだけになっていないか。依存じゃなくて、本当の意味での居場所になっているか。そこが気になって、しばらく眠れなかった。

コンカフェって、今すごく増えてる。大須だけでも、ここ数年で体感2倍以上になった感覚がある。参入障壁が低いから、いろんな動機で始める人が出てくる。それ自体は悪いことじゃない。

でも、問いたいのはここだ。

**誰のための店を作っているのか、ちゃんと答えられる?**

僕自身、正直に言うと、最初から全部わかって始めたわけじゃない。SUGAR&SPICEを2021年に開いたとき、理念はあったけど、現実はぐちゃぐちゃだった。ルールの穴をついた問題が起きたり、キャストのメンタルが崩れる場面を目の当たりにしたり。「店を守る」と「人を守る」が両立できるのか、何度も自問した。

今も完璧じゃない。ただ、一つだけ軸にしてることがある。

キャストが辞めたくない店を作ること。

「稼げる店」より「ここで働いてよかった」と思ってもらえる店。これだけはブレないようにしてる。

でも、ここで同業者の皆さんに問いたい。

キャストの安全って、どこまで本気で考えてる?

「うちはちゃんとしてる」という店ほど、盲点があることが多い。僕もそうだった。ルールを作った気になって、運用を現場に任せきりにして、実態を把握できていなかった時期がある。制度じゃなくて、文化として根付かせるのがどれだけ難しいか。

それと、もう一つ。

お客さんにとって、この場所はどういう意味を持ってる?

「推しがいる場所」「楽しい場所」で終わってていいのか。いや、それで十分かもしれない。でも、もっと深く問うと、その人の日常がほんの少し豊かになる場所になれてるか。その問いを持ち続けてるかどうかで、店の質が変わる気がしてる。

音MABUSHIを企画したり、推し撮りフェスをやってみたりするのも、突き詰めればそういうことだ。「来てよかった」を積み上げたい。それだけ。

コンカフェ業界は今、岐路にいると思う。ブームで膨らんで、これから淘汰が始まる。残る店と消える店を分けるのは、たぶん売上でも規模でもない。

「なんのために存在してるか」を、オーナーが本当に腹に落とせてるかどうか、だと思う。

あなたの店は、誰のための場所ですか?

僕はまだ、この問いに完全に答えられていない。だから毎日考えてる。