製造業から「人」を扱う業界へ。転機は「居場所」への気づきだった
製造業で20年近く管理職をやっていた僕が、なぜコンカフェ経営に転身したのか。よく聞かれる質問なんですが、一言で言うなら「人が安心できる居場所を作りたかった」からです。
製造業時代、僕は品質管理や生産管理の責任者として、数字と向き合い続けていました。効率化、コスト削減、品質向上。どれも大切な仕事でしたが、どこか物足りなさを感じていたんです。特に2018年頃から、部下の若いスタッフたちとの関わりで気づいたことがありました。
当時、僕の部署に新卒で入った女性がいました。真面目で優秀なのに、どこか居心地の悪そうな表情をしている。飲み会の席で話を聞くと「本当の自分を出せる場所がない」と言うんです。会社では求められる役割を演じ、家族の前でも「しっかりした娘」でいなければならない。そんな彼女の言葉が、僕の心に深く刺さりました。
製造業は「モノ」を作る仕事。でも僕は「人」ともっと向き合いたいと思うようになったんです。コロナ禍で在宅勤務が増え、人とのつながりがさらに希薄になっていく中、その思いは強くなりました。
転機は2020年の秋。たまたま大須を散歩していて、メイドカフェの前を通りかかったんです。お客さんの笑顔、キャストさんの生き生きした表情を見て「ここには確かに居場所がある」と直感しました。その日の夜、家で一人考えました。製造業で培った管理経験を、人が輝ける場所作りに活かせないだろうか、と。
2021年春、SUGAR&SPICEを開業したとき、正直不安だらけでした。業界のことなんて何も知らない。でも、製造業で学んだ「安全第一」の考え方だけは絶対に譲れませんでした。キャストさんが安心して働ける環境、お客さんが心から楽しめる空間。それを作るために、最初の半年間は毎日店にいて、一つ一つの課題に向き合いました。
今、3店舗を運営させていただいて思うのは、やはり「居場所」の大切さです。キャストさんたちが「ここでなら素の自分でいられる」と言ってくれる瞬間、お客さんが「疲れが吹き飛んだ」と笑顔で帰っていく姿を見るとき、この仕事を選んで本当によかったと感じます。
製造業時代の同僚には「なんでまた大変な業界に」と言われることもありますが、人の笑顔を直接見られるこの仕事の方が、僕には合っているんです。数字も大事ですが、それ以上に大切なものがあることを、この5年間で学びました。

