製造業からコンカフェへ。37歳で業界転身した理由
なぜ製造業の経営者だった僕が、コンカフェという全く違う世界に足を踏み入れたのか。今日はその話をしてみたい。
2021年、僕は37歳だった。家業の製造業は順調だったし、安定した毎日を送っていた。でも心の奥で、何かが物足りなかった。毎日同じルーティン、同じ顔ぶれ、同じ会話。悪くはないけれど、このまま定年まで同じことを続けるのかと思うと、なんだかモヤモヤしていた。
きっかけは偶然だった。大須を歩いていて、たまたま入ったコンセプトカフェ。そこで見た光景が忘れられない。キャストの女の子が、お客さんと本当に楽しそうに話している。お客さんも心から笑っている。その空間には、僕がずっと忘れていた「人と人のつながり」があった。
製造業では、お客さんの顔が見えることは少ない。商品は卸先を通じて消費者に届く。でもコンカフェは違う。目の前にいるお客さんが喜ぶ顔を直接見られる。キャストの成長も間近で感じられる。そのリアルなやりとりに、僕は強烈に惹かれた。
「やってみたい」
そう思った瞬間、怖くもあった。全く知らない業界。周りからは「なぜ安定を捨てるのか」と言われた。正直、僕自身もわからなかった。ただ、このままでは後悔すると直感で感じていた。
最初は本当に大変だった。製造業とは全く違うルール、文化、考え方。キャストの採用基準もわからない。お客さんが何を求めているかもわからない。毎日が勉強の連続で、夜中までネットで情報を集めた。
でも不思議なことに、製造業で培った経験が思わぬところで活きた。品質管理の考え方は、店舗運営にも応用できた。従業員のマネジメント経験は、キャストとの関係づくりに役立った。何より「お客さんに価値を提供する」という根本的な部分は変わらなかった。
今振り返ると、あの時の決断は正しかったと思う。SUGAR&SPICE、Mimi、ユメヲカケル!の3店舗を運営し、八咫烏舎という支援会社も立ち上げた。でも一番の収穫は、毎日が新鮮だということ。キャストの成長を見守り、お客さんに喜んでもらえる瞬間を共有できる。これは製造業時代には味わえなかった喜びだ。
転機というのは、計画して訪れるものじゃない。ふとした瞬間に現れて、勇気を出すかどうかを問いかけてくる。僕は運良くその声に従えた。今も毎日が挑戦の連続だけれど、後悔は全くない。人生、何歳からでも新しいスタートを切れるのだと、身をもって感じている。

