現場は今日も正直だった。キャストに教わった「一言」の話
経営者って、現場から離れていくものだと思っていた。でも最近、それが怖くなっている。
今日は火曜日。大須は平日の昼間だから、通りも落ち着いている。午前中に事務作業を片付けて、昼過ぎにSUGAR&SPICEに顔を出した。特に用事があったわけじゃない。なんとなく、足が向いた。
店に入ったら、オープン準備中のキャストが衣装の裾を直しながら「あ、オーナーだ」って顔をした。嬉しそうでも困ったふうでもない、ただの「あ、来た」という顔。それがなんか、よかった。
しばらくカウンター周りをぼんやり見ていたら、キャストの一人に「最近、注文のタイミングで声かけるのが難しくて」って相談された。お客さんが話し込んでいるときに割り込む感じが嫌で、タイミングを逃してしまうと。
正直、すぐには答えられなかった。
「それ、割り込みじゃなくて参加だよ」って言ったのは、隣にいた別のキャストだった。しれっと言って、また鏡を見てた。
それ、めちゃくちゃ正解だなと思った。私じゃなくて、キャスト同士で解決してた。
「仕組みを作る人」でいたいと思って経営している。自分がいなくても回る構造が理想だと、ずっと言ってきた。でも今日みたいな場面を見ると、仕組みより先に「文化」ができてるんだなと気づく。マニュアルに書けないやつ。
ユメヲカケル!でも先週、似たようなことがあった。新しいキャストが緊張でカチコチになっていたとき、古参のキャストが「最初は全員そうだったから大丈夫」って一言だけ言って、それで空気が変わったらしい。スタッフから報告で聞いた。私はその場にいなかった。
いなくてよかった、とも思う。いたら、私が何か言って蛇足になってたかもしれない。
Mimiも最近、スタッフ間の連絡が以前より細かくなってきた。「あのお客さん今日誕生日らしい」みたいな情報が自然に共有されるようになってきた。誰かが指示したわけじゃない。
でも正直、全部うまくいってるわけじゃない。
ある日、私が思いつきで「こういう演出どうかな」って口をはさんだら、現場の流れが少し乱れた。経営者の思いつきって、現場には突然降ってくる隕石みたいなもんだと改めて反省した。アイデアを出すのは好きだけど、タイミングと届け方はまだ下手くそだと思う。
稼げる店より、キャストが辞めたくない店を作りたいと言い続けてきた。今日みたいな日は、それが少しずつ形になってる気がして、じわっとする。
きれいな話にしたくないから正直に言うと、まだ足りてないことのほうが多い。でも今日、キャスト同士の「参加だよ」って一言を聞けたことは、今週いちばんの収穫だった。

