2026.09.19

製造業の親父がコンカフェを始めた理由、正直に話します

人生って、予定通りにいかないから面白い。そう思えるようになったのは、最近のことだ。

2021年にSUGAR&SPICEを開業する前、僕は製造業の経営者だった。父親が作った会社を引き継いで、ずっと「モノを作る」世界に生きてきた。納期、品質、コスト。そういった言葉が日常語で、カフェなんて縁もゆかりもない世界の話だった。

じゃあなんで、コンカフェなんかやり始めたんだと。

正直に言う。最初のきっかけは「暇つぶし」に近かった。コロナ禍で製造業の仕事が激減して、時間が余った。ふらっと名古屋・大須を歩いていたとき、コンセプトカフェという業態に出会った。キャストさんたちがお客さんと真剣に向き合っている姿を見て、何かが刺さった。

「これ、構造として面白いな」と思った。製造業の人間として、仕組みを見てしまうのが癖なんだろう。でも同時に、「この業界、働く子たちが守られていないな」とも感じた。それが本音だった。

最初の1年は、本当に苦労した。製造業の経験なんてほとんど役に立たない。お客さんとの距離感、キャストさんの感情の動き、SNSの流れ方。全部が未知だった。何度も「向いてないんじゃないか」と思った。

ある日、キャストの子に言われた言葉が忘れられない。「ここって、なんか安心して働けるんですよね」って。嬉しかったけど、当時の僕はその理由がよくわかっていなかった。

時間をかけてわかってきたことがある。「好かれる店」を作ろうとすると、どこかで無理が出る。でも「信頼される店」を目指すと、自然とキャストもお客さんも集まってくる。製造業でも同じだった。品質で誠実に向き合った取引先は、ずっと付き合いが続いた。本質は同じだった。

今はSUGAR&SPICEに加えて、Mimiとユメヲカケル!の3店舗を動かしている。アイドル事業のSUGAR SPIRAL LIVEも全国を回るようになった。イベントも色々やっている。傍から見れば「うまくいってる経営者」に見えるかもしれない。

でも今でも悩む。毎週、何かに迷っている。キャストの子が辞めると聞いたとき、まず「自分に何ができたか」を考える。そこで答えが出ないときが、一番しんどい。

製造業から来た僕が、この業界で学んだ一番大事なことは「人は仕組みより先に感情で動く」ということだ。製造業では仕組みで品質を担保できる。でもコンカフェは、キャストの子が「ここで働きたい」と思える空気がないと、何も始まらない。

41歳のときに始めて、今42歳。まだ道の途中だと思っている。完成した経営者なんてどこにもいないし、僕もそうじゃない。ただ、あのとき大須の街を歩いていた自分の直感は、間違ってなかったと思える。それだけで、十分だ。