2026.09.07

「好かれる店」より「信頼される店」を作りたい、という話

コンカフェを3店舗経営していると、よく聞かれることがある。
「どうすれば流行る店になれますか?」

正直に言う。僕はその問いに、あまり興味がない。

流行るかどうかより、続けられるかどうか。
好かれるかどうかより、信頼されるかどうか。
そこだけを、ずっと考えてきた。

2021年にSUGAR&SPICEを開業してから5年が経つ。大須という街でゼロから始めて、今はMimi、ユメヲカケル!と3店舗になった。傍から見れば順調に見えるかもしれない。でも実際は、失敗の連続だった。

最初の頃、僕は「いい場所を作れば人は来る」と信じていた。内装にこだわって、コンセプトを練って、SNSで発信して。でも気づいたら、キャストの子たちが疲弊していた。華やかな表側とは別に、舞台裏でギリギリの状態で回っていた。

そのとき初めて思った。
「僕は誰のために店をやっているんだろう」と。

お客さんのため、とすぐ答えたくなる。でも、キャストが追い詰められている場所に、本当にいいサービスなんて生まれない。笑顔って、強制できるものじゃない。

それから軸を変えた。
「キャストが辞めたくない店を作る」を最優先にした。

具体的には、シフトの無理強いをしない。困ったことを相談できる環境を整える。理不尽なクレームからはキャストを守る。当たり前のことのように聞こえるかもしれないけど、業界の現場では当たり前じゃないことも多い。

ある日、キャストの一人が「ここはちゃんと守ってもらえると思ってる」と言ってくれた。その一言が、今でも僕の背骨になっている。

お客さんへの想いも、同じ延長線上にある。
信頼できる場所にしか、人は何度も足を運ばない。「楽しかった」の次に「また来たい」と思ってもらうには、表面的な演出だけじゃ足りない。そこにいる人たちが、本当に働きがいを感じている場所かどうかが、空気感として滲み出る。

コンカフェって、まだまだ誤解されている業態だと思う。華やかだとか、怪しいとか、一過性のブームだとか。だから僕は、八咫烏舎という会社を通じて業界全体の底上げにも関わっているし、大須コンセプトショップ協会の理事としてエリア全体のことも考えている。

個人の店が良くなるだけじゃ、足りない。業界が信頼されないと、働く人も報われない。

経営者は仕組みを作る人だと思っている。自分がいなくても回る構造を作ることが、本当の意味での「いい店」への道だと。

まだ全然できていない部分もある。それは正直に言う。

ただ、今日も大須の街に店を開けている。
キャストたちが笑って働いていて、お客さんが「また来るね」と言って帰っていく。

それが、今の僕の答えだ。