「稼げる店」より「辞めたくない店」を目指す理由
コンカフェ経営を始めて5年。最初から今の考えがあったわけじゃない。
開業当初のSUGAR&SPICEは、正直迷走していた。他店の真似をして、とにかく売上を上げることばかり考えていた。キャストさんにも無理なシフトをお願いしたり、イベントを詰め込みすぎたり。案の定、半年で3人辞めてしまった。
その時、残ってくれた一人のキャストさんが言った言葉が今でも忘れられない。「店長、私たちがいなくなったら、この店はどうなるんですか?」
はっとした。僕は店を作っているつもりで、実は何も作れていなかった。
そこから方針を180度変えた。売上目標を一旦忘れて、キャストさんが安心して働ける環境作りに集中した。シフトの融通を利かせる。体調不良の時は無理させない。プライベートな相談にも乗る。当たり前のことだけど、この業界では意外と当たり前じゃない。
結果的に、キャストさんの定着率が上がった。お客さんとの関係も安定した。そして自然と売上もついてきた。
今、3店舗を経営しているが、僕の哲学は変わらない。「稼げるコンカフェより、キャストが辞めたくないコンカフェを目指す」。これが全ての判断基準になっている。
例えば新しいイベントを企画する時。まず考えるのは「キャストさんに負担をかけすぎないか」「楽しんでもらえるか」。売上予想はその次だ。
人材募集の時も同じ。「未経験歓迎、稼げます!」みたいな謳い文句は使わない。代わりに「アットホームな環境で、自分のペースで成長できる職場です」と伝える。派手さはないが、本当に合う人に来てもらいたい。
八咫烏舎での他店舗支援でも、この考えを大切にしている。短期的な売上アップの相談より、長期的な店作りの相談の方が多い。業界全体が健全に成長するには、働く人たちが幸せでないといけない。
もちろん、きれいごとだけでは経営は成り立たない。数字も見なければいけないし、時には厳しい判断も必要だ。でも、人を大切にするという軸がブレたら、きっと全部崩れてしまう。
最近、長く働いてくれているキャストさんから「この店で働けて良かった」と言われた時、僕の経営哲学は間違っていなかったと確信した。人が輝く場所を作ることが、結局一番の成功なのかもしれない。

