2026.11.02

「稼げる店」より「辞めたくない店」を選んだ理由

正直に言う。コンカフェを始めたとき、最初から「こういう店にしよう」なんて哲学はなかった。

SUGAR&SPICEをオープンしたのは2021年。製造業の経営をやりながら、半ば勢いで飛び込んだ世界だった。最初の1年は、とにかく手探りだった。うまくいかないことだらけで、「なんでこんなことやってんだろう」と思った夜も一度や二度じゃない。

そんな中で、一つのことが頭から離れなくなった。

キャストが辞めていくたびに、胸が痛かった。

本人の事情もあるし、ステージが変わるタイミングもある。全員引き止められるなんて思ってない。でも、「この店が嫌だから辞める」という理由で去られるのだけは、絶対に避けたかった。そこだけは、意地でも譲れなかった。

だから今、自分の経営の軸は「稼げる店」じゃなくて「キャストが辞めたくない店」に置いている。

誤解されることがある。「それって甘くないですか」って。でも逆だと思っている。キャストが安心して働ける場所じゃないと、いい接客なんて生まれない。いい接客がなければ、お客さんが本当の意味で喜んでくれない。喜んでもらえなければ、店は長続きしない。全部つながってる。

「好かれる店より、信頼される店を作る」というのも同じ発想だ。

派手なイベントで一時的に注目を集めるのは難しくない。でも、気づいたら誰も来なくなっていた、というのは業界あるあるだ。信頼は積み上げるのに時間がかかるけど、崩れるのは一瞬だ。だから地味でも、誠実な積み重ねを選んでいる。

Mimiもユメヲカケル!も、それぞれ全然違うカラーの店だ。でも根っこは同じ。「ここに来てよかった」とキャストにもお客さんにも思ってもらえる場所であること。それだけを、ずっと考えている。

もう一つ、自分の中で大事にしていることがある。「自分がいなくても回る仕組みを作る」ということだ。

経営者が現場に張り付かないと回らない店は、スケールしない。俺がいることでしか生まれない価値もあるけど、俺がいないと崩れる構造は脆い。だから少しずつ、権限を渡して、仕組みを作って、信頼できる人に任せていく。それが自分の役割だと思っている。

正直、まだ全然できてないところも多い。「任せる」のは思ったより難しい。口では言えても、ついつい手を出してしまう。42歳になった今も、そこは課題だ。

きれいごとみたいに聞こえるかもしれないけど、今の自分の本音はこうだ。

キャストの笑顔が、一番のモチベーションだ。それだけは、ずっと変わっていない。