手応えって、静かにやってくるんだな、と思った夏の話
正直に言う。今年の夏、何かが変わった気がしている。
数字で語れることじゃない。でも確かに、空気が違う。店の中の空気も、スタッフたちの顔も、お客さんとの距離感も。なんとなく、じゃなくて、確かに。
2021年にSUGAR&SPICEを始めたとき、僕は製造業の経営しか知らなかった。モノを作って、売る。そのサイクルしか頭になかった人間が、いきなり「人が主役の場所」を作ろうとしたんだから、最初はもう、失敗の連続だった。
キャストさんに辞められた夜、ひとりで店の椅子に座って天井を見ていたこともある。「自分には向いてないのかもな」って、本気で思った。
それでも続けてきたのは、辞める理由より続ける理由の方が多かったからだと思う。単純だけど、それだけだった。
今は三店舗になった。SUGAR&SPICE、Mimi、ユメヲカケル!。それぞれ全然違う色を持っている。同じ「コンセプトカフェ」というジャンルでも、中に入ればまるで別の世界。それが面白いし、そうじゃないと意味がないとも思っている。
ライブ事業も動いている。全国を回るツアーをやるなんて、3年前の自分には想像もできなかった。でも今、実際にキャストさんたちが全国の舞台に立っている。その景色を見るたびに、「ああ、やってよかったな」じゃなくて、「やっと始まったな」って感じる。不思議な感覚だ。
手応えって、大きな瞬間にやってくると思っていた。でも実際は違った。イベントが終わった翌朝、スタッフからLINEが来て「次もやりたいです」って一言あったとき。常連のお客さんが久しぶりに来て「変わらずここにあってよかった」って言ってくれたとき。そういう、静かな瞬間に積み重なってくるものだった。
僕は舞台に立つタイプじゃない。裏で動いている方が性に合っている。キャストさんが輝いている場所を作るのが自分の仕事で、自分が目立つ必要はないと思っている。でも今年は少し、外に向けて動く場面も増えた。コンセプトショップ協会の理事として、地域全体のことを考える立場にもなった。
正直、荷が重いと思う瞬間もある。自分ひとりで全部見えているわけじゃないし、判断を間違えることだってある。きれいごとだけでは回らない場面も、当然ある。
それでも今、目指している方向は間違っていないと感じている。「稼げる店」より「キャストが辞めたくない店」。「好かれる店」より「信頼される店」。そっちに向かって、少しずつだけど確かに動いている。
目標はまだ先にある。でも今日、この夏の空気を感じながら、ちゃんと前に進んでいるなと思えた。それだけで、十分だと思っている。

