製造業の社長が、なぜコンカフェを始めたのか。正直に話す。
42歳になった今でも、たまに自分でも不思議になる。
なんで俺、コンカフェやってるんだろう、って。
2021年にSUGAR&SPICEをオープンするまで、僕は現役の製造業の経営者だった。工場があって、職人がいて、B to Bの世界で生きていた。お客様の顔が見えにくい仕事だ。毎日、品質と納期と原価の話をしていた。
別に嫌いじゃなかった。でも、何かが足りなかった。
きっかけは些細なことだった。2019年ごろ、大須をぶらぶら歩いていて、あるコンセプトカフェに入った。スタッフの子が笑顔で迎えてくれて、たわいない話をして、帰り際に「また来てね」って言ってくれた。
帰り道、なんか温かい気持ちだったんだよね。
製造業ってすごく大事な仕事だけど、「ありがとう」が直接届きにくい。でもあの店には、お客さんの「楽しかった」が毎日あった。それがすごく羨ましかった。
同時に、気になることも見えた。スタッフが不安そうだった。働く環境の話を調べていくうちに、業界全体にいろんな課題があることがわかった。
「じゃあ、ちゃんとした店を作ればいいじゃないか」
今思うと、めちゃくちゃ単純な動機だ。でも本当にそれだけだった。
ただ、オープンしてすぐに思い知った。甘かった、と。
製造業の経営と、人の感情を扱う商売は、根本的に違う。不良品は検品できる。でも、キャストさんの心のSOSは、数字に出ない。お客さんの「なんか違う」という感覚は、仕様書に書けない。
最初の一年は、本当にしんどかった。トラブルも多かったし、自分の判断が間違っていたこともあった。製造業で培った「仕組みを作る」思考が、この業界では逆に邪魔になる場面もあった。人間相手の仕事は、マニュアルで全部解決できない。
それでも続けてこられたのは、キャストさんたちのおかげだと思っている。辞めずにいてくれた子たちが、この店を育ててくれた。
今、SUGAR&SPICEからMimi、そしてユメヲカケル!と三店舗になった。八咫烏舎という支援会社も立ち上げて、アイドルのライブ事業も動いている。外から見れば「うまくいってる」に見えるかもしれない。
でも正直に言う。今も毎週、何かしら悩んでいる。
「稼げる店より、キャストが辞めたくない店を作る」という方針は変わっていない。ただ、それを実現するのが簡単じゃないことも、痛いほどわかってきた。
製造業から飛び込んだ異業種で、今日も懲りずに考えている。
そういう人間が、大須でカフェを三軒やっています。

