2026.08.01

製造業の社長がコンカフェを始めた理由、正直に話します

2021年、僕はものづくりの会社を経営しながら、名古屋・大須に「SUGAR&SPICE」を開いた。42歳になった今でも、あの決断が正しかったかどうか、完全には答えが出ていない。

もともと僕は製造業の人間だ。工場で部品を作って、納品して、品質を管理する。地味だけど、社会を支えている仕事だと誇りを持っていた。今も持っている。

じゃあなぜコンカフェを始めたのか。

一言で言うと「人の笑顔を直接見たかった」からだと思う。

製造業の仕事は、エンドユーザーの顔が見えない。部品がどこかに渡って、製品になって、誰かの手に届く。それ自体は素晴らしいことなんだけど、僕には何かが足りなかった。自分が作ったものが、誰かを笑顔にしている瞬間を、この目で見たかった。

大須という街に惚れたのも大きい。オタクカルチャーあり、食文化あり、古着屋あり。ごちゃごちゃしていて、でも温かい。「ここなら面白いことができる」という根拠のない確信があった。

最初は本当に何も知らなかった。コンセプトカフェって何?キャストさんって何者?チェキって?最初の半年は知識ゼロから始まって、ひたすら現場に張り付いていた。製造業で培った「仕組みを作る」という発想だけを武器に、手探りで形にしていった。

失敗もした。人間関係でつまずいたこともある。キャストさんが突然辞めてしまって、自分の何が悪かったのかわからず、夜中に一人でぐるぐる考えたこともある。「稼げる店を作ること」を優先しすぎていた時期があった。それが間違いだったと気づくのに、少し時間がかかった。

キャストさんが「ここで働き続けたい」と思える場所を作らない限り、お客さんに「また来たい」とは思ってもらえない。当たり前のことなのに、なぜか後回しにしていた。

今はSUGAR&SPICEに加えて「Mimi」と「ユメヲカケル!」も運営している。アイドルイベントや推し撮りフェスなんかも手がけるようになった。「八咫烏舎」という会社でコンカフェを運営したい人のサポートもしている。気づいたら、ずいぶん遠くまで来てしまった。

でも原点は変わっていない。製造業の工場で感じた「誰かの笑顔を直接見たい」という気持ちだ。

キャストさんが楽しそうに働いている姿を見るとき、お客さんが帰り際に「また来ます」と言ってくれるとき、あの夜中にぐるぐる悩んでいた自分に「続けてよかったぞ」と伝えたくなる。

42歳、まだ途中だ。